膝に矢を受けた男がスカイリムに登場するまで

膝に矢を受けた男がスカイリムに登場するまで

Parker Wilhelm profile pictureBy Parker Wilhelm / Content Manager
2021年11月10日

「最初は、ソーシャルメディアでミームがいくつか作られているのを見かけたくらいでした」。Bethesda Games Studiosのデザインディレクター、Emil Pagliaruloはそう当時を振り返ります。「あの頃はなんとも思っていませんでしたね。ミームなんていくらでもありますし。

どんどん作られるから、流行することはめったにありません」

「でも、これは違いました」

ここで言っているミームとは、NPCの衛兵のとあるセリフを元ネタにしたものです。Pagliaruloが書いた何気ないセリフの1つで、この一言は彼の知らぬ間にゲームを象徴するようなセリフとなっていきました:「昔はお前のような冒険者だったが、膝に矢を受けてしまってな」

ソーシャルメディア、ファンアート、ミームサイトKnowYourMemeでの記事、パロディーソングなどが作られた「膝に矢を受けてしまってな」は、『Skyrim』ファンだけでなくゲーマーやインターネットのコミュニティでまたたく間に広まりました。

「こんなセリフがここまでウケると思っていなかったので、見かける機会がどんどん増えていくのは笑えました。どこに行っても見かけるし、他のゲームをやっていても出てくるようになって妙な気分でしたね。でもさすがに、LMFAOのミュージックビデオで膝に矢が刺さった男が出てきたときは衝撃を受けました」

Pagliaruloは当時、『Skyrim』のシニアデザイナーでした。問題のセリフは『Skyrim』のNPCが話す、単なる当たり障りのないセリフだったといいます。「確かあれを書いたのは夜遅く、というよりも早朝でした。『Skyrim』の開発が始まってずいぶん経った頃で、僕は衛兵のセリフを量産していました。数年後に『Fallout 4』でも同じような仕事をしましたね。とにかく面白いセリフをたくさん考えて、衛兵を少し面白くしようとしていただけなんです。ただそれだけだったんですが」

SKY10 dragon attack in-body

2017年の記事でMashableのインタビューを受けた際、Pagliaruloは「膝に矢を受けて」のようなNPCのセリフが、ただ沈黙を埋めるだけのものではなく、そのキャラに特徴や人格を与えるものだと語っています。

「このケースでは、面白くてちょうど説得力があるかと思いました。以前膝に矢を受けたせいで今は半ば引退し、ファンタジー世界のくたびれた警官のように、街をうろうろしている感じですね」

どんなに『Skyrim』の世界に馴染んでいても、ゲームにセリフや音声を加えるのは大仕事です。外国語へのローカライズや字幕の文字数制限を考慮すると、なお大掛かりになります。

「ストーリーにしっかり関わるようなセリフが一番大変なんです。デザイナーはそれを大量に書かなければいけないし、何度もレビューされ、変更されることも多い」

「その後にキャラクターのオーディションでそのキャラにぴったりの声優を選び、全て収録しなければなりません。収録後にセリフを変更すると、また同じ声優を呼んで録り直す必要があります。さらに技術の進歩が工程を増やしました。セリフにリアルなリップシンクをつけてくれる外部の会社に渡すこともあるんです。ゲームのセリフ一つにここまで手間がかかっていることは、意外と知られていないですね」

SKY10 Troll Fight in-body

「ビデオゲーム製作においては当たり前のことなのですが、『Skyrim』の世界を人の声で満たすためには、とてつもない手間と人が必要です。だからこそ、衛兵の何気ないセリフがゲームの発売後すぐ、ミーム文化の仲間入りした現象は興味深いことでした」

「当時は気づきませんでしたが、流行るミームの共通点はファンがどんな場面でも使えるものだと思います」とPagliaruloは言います。「猫に怒鳴る女性他の女性にうつつを抜かす彼氏なんかもそうですよね。元々の意味はたいして重要じゃなくて、他の状況に当てはめるとどれだけ面白くなるかがポイントです。"膝に矢を受けて"ってミームが面白いのは、最終的に『Skyrim』や衛兵が全く関係ない形で使われるからなんでしょう」

それこそが大流行の理由だったのかもしれません。Pagliaruloは「膝に矢を受けて」がそのままの意味で、『Skyrim』の世界でプロポーズを意味するスラングなどではないと言います。しかし、ゲーム内では普通なのに現実の私たちにとって不思議なこのセリフは、ホワイトランを歩き回るプレイヤーの想像力を掻き立てます。衛兵は本当に冒険者稼業をやめ、家族を持って定住したのかもしれないし、ただのファンタジー世界のくたびれた衛兵なのかもしれません。いずれにせよ、このセリフもまた『Skyrim』が1つの側面だけでは定義づけられないことを示すいい例です。だから皆さんのような冒険者がこの作品を愛し続け、10年経ってもこの世界を訪れてくれるのでしょう。

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